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[ここはすべての夜明け前]救いがない悲しいSF小説


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間宮改衣さんのデビュー作第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞を受賞した話題作を読んでみました。

編集部選考で全員が満点、最終選考で賛否両論の大激論だったそうです。

ページ数はそこまで大きくないですが、心に残る名作だと感じました。

あらすじ

いやだったこと、いたかったこと、しあわせだったこと、あいしたこと、一生わすれたくないとねがったこと

◇老いない身体を手に入れた彼女の家族史

2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに父親から提案されたことだった。

かいていったらなっとくできるかな、わたしは人生をどうしようもなかったって。

舞台は2123年の九州地方。

前半は山奥でわたしが家族史を紹介しながら物語が進んでいきます。

主人公の「私」は100年前に融合手術を受け、歳をとらない体になっています。

「私」は融合手術を受けるつもりはなくて、自殺措置をうけるつもりが、お父さんの意見に流される形で手術を受けることになります。

そんな「私」が自分より先に年老いていくお父さんや兄弟、その子供の家族史を書いていきます。

後半はある種の新人類のような人たちとの出会い、家族が全員死んでしまった主人公の決断が感動です。

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アリエン隊長

あんまりSFぽくないかと思って読み進めると、ちゃんとSFしてていい。

雰囲気としてはとても暗いのですが、太宰治の「人間失格」やサリンジャーの「ライ麦畑で捕まえて」、ヘッセの「車輪の下」など人間社会で上手く生きていけない主人公が好きな方は刺さると思います。

著:太宰 治
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著:J.D.サリンジャー, 翻訳:野崎 孝
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著:ヘッセ, 翻訳:松永 美穂
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だれも悪くない登場人物

出てくる登場人物は全員ハッピーな感じではありません。

若くして自殺を望む主人公だけではなく、段々とぼけていくお父さん。

優しかったお父さんが豹変していく姿はとても悲しいです。

さらに、兄弟である浩太さんの決断さやねえちゃんとの別れ

一番は恋人でもあるシンちゃんとの関係など。

別に誰か悪人がいて物語が進んでいくわけではなく、みんなが一生懸命生きていて、誰も悪くないところが、この物語を一層悲しい、やるせない印象を与えます。

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ポロット

作者が女性の方なので、女性の心理描写が非常にうまいです。当たり前か。

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アリエン隊長

SFだからって毛嫌いしないでほしいな。

ひらがな多めで感動的な文章

この本を開いてまず思うのが「ひらがな多い」ということでしょう。

とても読みやすいです。

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ポロット

ワタシでも読めました。

これは、主人公が一人称で語っていく形式で進んでいくので、主人公の子供っぽい印象が与えられます。

似たような文体で、知能の状況とともに文体が変化していく「アルジャーノンに花束を」という小説を思い出す人も多いかもしれません。

著:ダニエル キイス, 翻訳:小尾 芙佐
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アルジャーノンも感動的な小説ですが、この小説も負けていないと思います。

個人的に感動した文章をいくつか上げていきます。

じんせいでたったひとつでいいからわたしはまちがっていなかっておもうことがしたいな

いやだったこと、いたかったこと、あいあわせだったこと、あいしたこと、一生わすれたくないとねがったこと。

なにもかもまにあわなかったんだけど、さいごにわたしはわたしでしあわせになりたいな

他にも感動的な文章が120ページくらいの中にたくさん詰まっています。

星野源さんも大絶賛

4月2日には星野源さんが「星野源のオールナイトニッポン」にて紹介したそうです。
読んだあと生きててよかったと思った

「こういうものに触れるために頑張って生きてるんじゃないかって思いたくなるくらい、僕は大好きな作品でした」

と熱いご感想を語ったそうです。

作品情報

  • 出版年:2024年3月
  • 出版社:早川書房
  • 第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞
  • ページ数:123p

間宮改衣先生

1992 年

大分県出身

『ここはすべての夜明けまえ』にて第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞を受賞し、デビュー。

まとめ

私の個人的な思想だと、余命幾年とか家族の絆だとかの安い作品は大嫌いなのですが、この小説はSFとしても感動的な小説としても、非常に面白くおすすめできる作品です。

ひらがな多めかつページ数も少ないので、最近本読んでいない方や難しい小説は嫌いな方にもおすすめです。

ただ、暗すぎるのでそこだけは注意してください。

個人的2024上半期のベスト小説です!

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ポロット

バッドエンドこそ至高

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アリエン隊長

ひねくれロボットが!

ネットの評価

始まりのシーンからせつなくて泣いた。 SFに分類されてるけど、ありえると思える設定で、実際に現実に起こっているような錯覚に陥った。 近い将来こんな世界になりませんように。
人間である、ということは、汚いということなのかもな。 合理的でないことも、汚い感情も、涙も、血も、体液も出るのが人間。 だけど人間であることが愛おしい。
SFなんだけど、SFだではなく、純文学でもあり、先が気になる展開でエンタメ要素もあり

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