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[三体]21世紀最高の中国SF大作の魅力を徹底レビュー


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今世紀一番ヒットしているといっても過言でない「三体」の紹介・レビューをします。

Netflixで映像化、2019年時点で全世界累計発行部数は2900万部を記録しており、20か国以上の言語で翻訳されている超ド級のヒット作です。

アジア&翻訳もの初のヒューゴー賞受賞の偉業も成し遂げています。

My Score

知名度

分かりやすさ

文学性

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ポロット

文庫版も出た今が読み時だよ

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アリエン隊長

Netflix版も公開されたしね。

こんな人におすすめ

・今一番売れているSF小説が読みたい

・圧倒的なスケール感

・科学的知見が作品に盛り込まれている

あらすじ

三体は大まかに説明すると、地球文明と三体文明の戦争を描いた物語です。

めちゃめちゃ厚い作品ですが、シリーズごとに主人公が変わるので飽きずに読めます。

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ポロット

中国の名前覚えられない………

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アリエン隊長

本には人物評が入ってます!

三体

文化大革命で父を惨殺され、人類に絶望した科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。 彼女がスカウトされた軍事基地では、人類の運命を左右するプロジェクトが進行していた。数十年後、科学者の連続自殺事件を追って謎の学術団体に潜入したナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)を、怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う!そして、汪淼が入り込むVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

偉大なる一作目です。

ここでは三体文明とのファーストコンタクトが描かれます。

筆者は中国人なのに文化大革命の描写から始まることにも驚きました。

物語としては、三体文明との接触と科学者の謎の死を追う主人公という感じで進んでいきます。

そして、その物語はVR上で展開されていきます。

ラストはSF特有のトンデモ展開でした。

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ポロット

トンデモ過ぎて一年間寝かせました。

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アリエン隊長

二部からとても面白いから頑張って!

三体2 黒暗森林

天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエが宇宙に向け発信したメッセージは、異星文明・三体世界に到達する。 新天地を求める三体文明は侵略艦隊を地球へと送り出した。 太陽系到達は四百数十年後。しかも人類のあらゆる活動は三体文明が送り込んだ極微スーパーコンピュータ・智子(ソフォン)に監視されていた!  危機に直面した人類は、前代未聞の「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」を発動させる。人類の命運は四人の面壁者に託された!

そしてとんでもなく面白い第二作。

第二部はとても熱い戦いです。どのくらい熱いかというとジャンプ作品くらい熱いです。

個人的には一番好きなパートです。

物語は三体文明に賛同する地球人と地球人の戦いになります。

三体文明のトンデモテクノロジーによって、科学の発展が阻害され、さらにどこでも超微小な監視カメラがあるように情報がつつぬけの状態になってしまいます。

そこで、「面壁計画」として人類は代表者を4人選出します。その4人は「面壁者」と呼ばれます。

面壁者は三体文明側にばれないよう、他者にもらさず自分の中で作戦を立て実行するという任務を負います。

三体文明側も「破壁人」を立て、あらゆる情報から面壁者の立てる作戦を暴こうとします。

要するに面壁者VS破壁人の構図です。

熱くないですか?

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ポロット

史強好き

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アリエン隊長

羅輯嫌い

三体3 死神永生

三体文明の地球侵略に対抗する「面壁計画」の裏で、若き女性エンジニア程心(チェン・シン)が発案した極秘の「階梯計画」が進行していた。 目的は三体艦隊に人類のスパイを送り込むこと。 程心の決断が人類の命運を揺るがす。シリーズ34万部以上を売り上げた衝撃の三部作完結!

ついに完結作になります。

第三作はスケールがとんでもなく大きいです。

私は宇宙の大きさを感じる小説が好きなのですが、これもその類です。

コールドスリープ技術で時間もばんばん流れますし、舞台も地球から宇宙へ。

これぞSFという醍醐味を煮詰めたような感じです。

ラストもいい。ぜひ読んでください

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ポロット

章北海大好き

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アリエン隊長

羅輯大好き

三体0【ゼロ】 球状閃電

14歳の誕生日の夜に“それ”に両親を奪われた少年、陳。 謎の球電に魅せられ、研究を進めるうちに、彼は思いも寄らぬプロジェクトに巻き込まれていく。 史上最強のエンタメ・シリーズ『三体』三部作で描かれたアイデアやキャラクターが登場する、衝撃の前日譚!

三体シリーズの前に執筆された作品です。

共通するのはキャラクターくらいですが、三体にはまった方はぜひ

三体X 観想之宙

『三体III 死神永生』の背後に隠された驚愕の真相が明かされる第一部「時の内側の過去」。和服姿の智子が意外なかたちで再登場する第二部「茶の湯会談」。 太陽系を滅ぼした〝歌い手〟文明の壮大な死闘を描く第三部「天萼」。 そして――。 《三体》の熱狂的ファンだった著者・宝樹は、第三部『死神永生』を読み終えた直後、喪失感に耐えかねて、三体宇宙の空白を埋める物語を勝手に執筆。それをネットに投稿したところ絶大な反響を呼び、《三体》著者・劉慈欣の公認を得て、《三体》の版元から刊行されることに……。ファンなら誰もが知りたかった裏側がすべて描かれる、衝撃の公式外伝(スピンオフ)

この作品は何とファンが執筆したスピンオフです。

物語終盤では、スポットライトが当てられなかったり、語られなかったりする箇所があるのですが、それを埋める形になっています。

うーん。それにしてもすごい熱量ですね。

そもそも三体問題とは何か?

三体問題とは、ニュートン力学において、三つの天体が互いに重力を及ぼし合う運動を予測する問題のことを指します。

二つの天体であれば、その運動は単純な楕円軌道を描くことが分かっていますが、三つ以上になるとその動きは極めて複雑になり、予測不可能な挙動を示します。この問題は、宇宙の動きを理解する上で極めて重要でありながら、数学的に完全な解決がされていない未解決問題の一つです。

歴史

この三体問題は、ニュートンが「万有引力の法則」を発見した後に研究されました。

ニュートン力学では、二体問題は正確に解けますが、三体以上になると方程式の解析的な解が存在せず、長期的な軌道を予測することができません。

十八世紀にはフランスの数学者ジョゼフ=ルイ・ラグランジュが、特殊な条件下で三体問題の解を見つけましたが、一般的な三体問題の解決には至りませんでした。その後、ポアンカレがこの問題を研究し、三体問題がカオス理論と深く結びついていることを示しました。

カオス理論においては、わずかな初期条件の違いが時間とともに大きな違いを生むため、長期的な未来予測が極めて困難になります。

三体問題の難しさには、いくつかの要因があります。

一つは、カオス的な振る舞いを示すことです。三つの天体は互いの重力の影響を受け、軌道が絶えず変化するため、長期間にわたる正確な運動予測ができません。

もう一つの要因は、解析解が存在しないことです。数学的に一般解を求めることができないため、スーパーコンピューターを用いた数値シミュレーションによる近似解が必要になります。また、天体の配置によっては、突然、一つの天体が外へ弾き飛ばされることもあり、安定した系を維持できるかどうかが予測困難であるという特徴もあります。

三体問題は、現実の天文学や物理学においても極めて重要な課題です。例えば、太陽系外惑星の運動を解析する際には、三体問題を応用したシミュレーションが使われています。また、コンピューターシミュレーションを活用し、「安定する三体系」と「不安定な三体系」の違いを研究する試みも続けられています。三体問題は、数学的に解決されていない未解決問題でありながら、天文学や物理学のさまざまな分野で応用されており、その影響は非常に大きいものです。

『三体』における三体問題は、単なる科学的な題材としてだけでなく、物語の根幹を支える要素となっています。数学的に解決できない不安定な環境の中で生きる三体人が、安定した惑星系である地球を狙うという設定は、科学的背景を物語の動機に組み込んだ見事な例です。こうした科学理論とフィクションが融合した作品こそが、『三体』の魅力を生み出しているのです。

黒暗森林理論とは

私が一番好きな『三体Ⅱ 黒暗森林』では、宇宙における知的文明同士の相互作用を説明する理論として「黒暗森林理論」が登場します。

この理論は、なぜ宇宙に知的生命の痕跡が見えないのか、いわゆる「フェルミのパラドックス」に対する一つの解答でもあります。宇宙に膨大な数の星がありながら、なぜ人類は異星文明を発見できていないのか。その理由を、宇宙の社会的ダイナミクスをモデル化することで説明するのが「黒暗森林理論」です。

フェルミのパラドックス

黒暗森林理論の直接の起源は、1950年に物理学者エンリコ・フェルミが提起した「フェルミのパラドックス」**にあります。

フェルミのパラドックスは、以下のような疑問に基づいています。

  • 銀河系には約1000億個の恒星があり、そのうち多くの恒星が地球のような惑星を持っている可能性がある。
  • 宇宙の年齢(約138億年)を考慮すると、地球外知的文明が誕生し、進化する十分な時間があったはずである。
  • 技術的に高度な文明が存在するならば、彼らは既に宇宙探査を行い、その痕跡が見つかってもよいはずである。
  • しかし、私たちは異星文明の証拠を何も発見していない

フェルミのパラドックスに対する仮説の一つとして、「宇宙に文明があるとしても、彼らは意図的に沈黙している」という考え方が浮上しました。この仮説が黒暗森林理論の思想的な原点となっています。

黒暗森林理論の前提

黒暗森林理論は、以下の四つの前提に基づいています。

  1. 宇宙には無数の知的文明が存在する
    • 天の川銀河だけでも1000億個以上の恒星があり、その中には生命が誕生する可能性のある惑星も多数存在している。
    • したがって、異星文明は多数存在するはずである。
  2. 資源は有限である
    • 宇宙に存在するエネルギーや居住可能な惑星は限られており、知的文明はこれらの資源を求めて競争せざるを得ない。
    • そのため、異なる文明が遭遇した場合、対立や衝突の可能性が高まる。
  3. 相手の意図を知ることは不可能である
    • 異星文明が平和的なのか、侵略的なのかを事前に判断することはできない。
    • もし相手が敵対的であれば、自文明が生存の危機にさらされる。
  4. 自衛のためには相手を先制攻撃するのが最も合理的である
    • 相手が侵略的であるかどうか分からなくても、先に攻撃すれば確実に生存できる
    • そのため、知的文明は相手の存在を確認した時点で、相手を滅ぼそうとする。

この四つの前提により、「宇宙は沈黙した暗い森であり、すべての文明は見つからないように隠れるしかない」という結論が導き出されます。

作品のポイント

まず、本作の特徴として圧倒的なスケールの物語が挙げられます。

『三体』は、単なる異星文明との接触を描くだけではなく、地球と宇宙の未来を見据えた壮大な歴史を展開しています。

ストーリーの序盤では、中国の文化大革命という歴史的背景から始まり、やがて人類と異星文明の衝突という大きなテーマへと広がっていきます。宇宙的なスケールで時間が流れ、知的生命が生存競争を繰り広げるという視点は、従来のSF作品とは一線を画すものとなっています。

また、本作は科学的な裏付けが非常に強い作品でもあります。

量子力学や天文学、数学などの高度な科学知識が物語に緻密に組み込まれており、特にニュートン力学の「三体問題」や量子テクノロジーを用いた「智子(ソフォン)」の設定は、科学とフィクションの融合の成功例といえます。物理学の難題である三体問題をテーマに据えることで、物語全体に強いリアリティを与えています。

一般的なSF作品では、科学的な説明が簡略化されることが多いですが、本作ではあくまでも現実の科学理論を忠実に活かし、それを基盤としてストーリーが展開される点が特徴です。

加えて、本作はシリーズ三部作としての壮大な展開を持っています。『三体』は第一作であり、続編『黒暗森林』、そして完結編『死神永生』へと続いていきます。第二作『黒暗森林』では、宇宙における知的生命の生存戦略を描いた「黒暗森林理論」が登場し、フェルミのパラドックスに対する新たな解釈を提示しています。

シリーズが進むにつれて物語のスケールはさらに拡大し、人類の存続をかけた壮大な宇宙戦争へと発展していきます。

このように、単なる一作品としてではなく、壮大なシリーズとして構築されている点も本作の魅力の一つです。

作品情報

2015年、第73回ヒューゴー賞の長編小説部門を受賞。アジア人作家の作品では初めての受賞となりました。

2020年 には第51回星雲賞海外長編部門(「三体」)、2021年 には第52回星雲賞海外長編部門(「三体II 黒暗森林」)を受賞しています。

2019年時点で全世界累計発行部数は2900万部を記録しており、20か国以上の言語で翻訳されています。

2006年5月から12月まで、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』で連載され、2008年1月に重慶出版社によって単行本が出版されました。

日本語版は2019年7月4日に発売されました。

作者

作者は劉慈欣(りゅう じきん、リウ・ツーシン、1963年6月23日 - )です。

本業はエンジニアで、発電所のコンピュータ管理を担当していたです。

本業からあのリアルな描写があるのでしょうね。

三体以外にも何冊も翻訳されています。

テンセント版を見るかNetflix版を見るか

現在、中国のテンセントとNetflixにて映像化されています。

テンセント版

テンセント版が先に映像化されました。

現時点では、一作目が30話でシーズンⅠとして配信されています。

キャストはほとんどが物語同様中国人です。

WowowやU-next,アマプラで見ることができます。

Netflix版

Netflix版は2024年3月21日に配信が開始されました。

作者の協力を得てストーリーを大幅に改変し、舞台をイギリスに変更していたり、登場人物も葉文潔やマイク・エヴァンズ、紅岸基地関係者等を除きイギリス人に変更され、汪淼や丁儀らにあたる科学者を5人のオックスフォード大学研究者としています。

これはしょうがないと言えばしょうがないのかもしれません

シーズン1として8話が公開されています。

どちらがいいか

どちらがいいかは厳密にはいえません。

テンセント版は30話なので原作に忠実に行きたい方におすすめです。

Netflixは8話と短いことや改変があるので、気に入らない方もいるかもしれません。

しかし、サクッとみることができるので、雰囲気をつかんでから原作に行きたい方にお勧めです。

どちらにせよ続編が楽しみですね。

ネットの評価

分厚いから面倒で敬遠してた。早く読めばよかった。読みやすい文章ですいすい読める。読み始めたら世界観に引き込まれる。翻訳も上手いのだろう。読むのがとまらない!
中国史のリアルな痛みをまじまじと感じる表現、そして三体の明かされていく現象に引き込まれました。 めちゃくちゃ面白かった。 記憶消したい系ですね。最高
物理を学んだものとして、とても興味深く読めました。ただ、ところどころエンターテイメント性がと良いかなあとも思いました。

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