『m5paperS3』低消費電力の電子ペーパーでデジタルな名刺をつくろう
表示が乱れた場合は再ロードをお試しください。
電子ペーパーは「表示を変える瞬間だけ電力を使い、あとは“紙のように”情報を保持し続ける」──この一点だけで、デジタル機器の前提をひっくり返します。M5Paper S3は、その電子ペーパーを“工作の素材”として扱える開発ボードです。低消費電力・屋外視認性・紙に近い質感に加えて、Wi-Fiやタッチ、RTC、バッテリーまで一体。だからこそ、ただの電子名刺に留まらず、デスクの定番表示、IoTの状態可視化、持ち歩けるメモ端末など、日常に溶け込む小さな道具をいくらでも生み出せます。本記事では電子ペーパーの基礎から、M5Paper S3の特徴、旧モデルとの違い、そしてUIFlow/Arduinoでの動作確認と“飾れるデジタル名刺”の作り方までをまとめます。
電子ペーパーとは?
電子ペーパー(E-ink、電子インク)は、紙のような見た目と読みやすさを実現したディスプレイ技術です。Kindleなどの電子書籍リーダーやデジタル掲示板、電子棚札などに広く使われています。液晶ディスプレイとは異なり、紙に近い読書体験を提供することが特徴です。
電子ペーパーの仕組み
電子ペーパーは、微細なカプセルの中に白と黒の電子インク粒子を閉じ込めた構造になっています。
基本的な動作原理:
- 各カプセルには、白い粒子(正電荷)と黒い粒子(負電荷)が液体中に浮遊しています
- 電圧をかけることで、粒子が上下に移動します
- 白い粒子を表面に集めると白く、黒い粒子を表面に集めると黒く見えます
- この仕組みで文字や画像を表示します
電力が必要なのは画面を書き換える瞬間だけで、一度表示した内容は電源を切っても残り続けるのが大きな特徴です。
電子ペーパーのメリット
1. 目に優しい
紙のように光を反射して表示するため、液晶画面のようなバックライトによる目の疲れがありません。長時間の読書でも快適です。
2. 圧倒的な省電力性
画面の書き換え時にのみ電力を消費するため、バッテリーが数週間から数ヶ月持続します。常に表示し続けても電力をほとんど消費しません。
3. 屋外でも見やすい
直射日光の下でも反射によって表示が見えるため、屋外での視認性が非常に高いです。液晶画面のように画面が見えなくなることがありません。
4. 軽量で薄い
ディスプレイ自体が非常に薄く軽量に作れるため、持ち運びに便利なデバイスを実現できます。
電子ペーパーのデメリット
1. 画面の書き換えが遅い
液晶やOLEDと比べて、画面の切り替えに0.5〜1秒程度かかります。動画視聴やゲームには向いていません。
2. カラー表示が弱い
カラー電子ペーパーも存在しますが、発色が淡く、リフレッシュレートも遅いため、カラー表示が必要な用途には不向きです。
3. 画面書き換え時に残像が出やすい
前の画面の跡が薄く残ることがあり、定期的に全画面をリフレッシュする必要があります(一瞬真っ黒になる動作)。
4. バックライトがない(または弱い)
基本的に外光で読むため、暗い場所では読みにくくなります。フロントライト付きのモデルもありますが、明るさは液晶に劣ります。
M5Paper S3のスペック
M5Paper S3は、M5Stackが2024年に発売した最新の電子ペーパー搭載開発ボードです。以下が主なスペックです。
プロセッサ
- ESP32-S3R8 デュアルコアLX7プロセッサ
- クロック周波数:240MHz
- 8MB PSRAM
- 16MB 外部フラッシュメモリ
ディスプレイ
- 4.7インチ 電子ペーパー(タッチスクリーン一体型)
- 解像度:960×540ピクセル(235ppi)
- 16階調グレースケール表示
- GT911静電容量式タッチパネル(2点タッチ、ジェスチャー操作対応)
- フルスクリーン構造
センサー・機能
- ジャイロスコープセンサー(BMI270):動作検知、持ち上げで起動など
- オンボードブザー
- 物理ボタン
- RTC(リアルタイムクロック)チップ BM8563:スリープ/復帰機能
- microSDカードスロット
バッテリー・電源
- 1800mAh リチウムバッテリー内蔵
- 充電機能
- バッテリー検知回路搭載
- 低消費電力設計
接続性
- Wi-Fi(2.4GHz)
- USB OTG対応
- HC1.25-4PLT 拡張ポート
その他
- 背面マグネット装着
- 持ち運び用フック
- 対応開発環境:UIFlow 2.0、Arduino IDE、ESP-IDF、PlatformIO
外観
外観はこんな感じです。
軽くていい感じ。




M5Paper(V1.1)とM5Paper S3の違い
1. プロセッサの性能向上
M5Paper V1.1:
- ESP32-D0WDQ6-V3
- 4MB PSRAM
- 16MB フラッシュ
M5Paper S3:
- ESP32-S3R8(より高性能)
- 8MB PSRAM(2倍)
- 16MB フラッシュ
- USB OTG対応
ポイント: S3は処理能力が向上し、メモリも倍増しているため、より複雑なアプリケーションに対応できます。
2. デザインとフォームファクター
M5Paper V1.1:
- 3つのGroveポート(表面に配置)
- やや厚め
M5Paper S3:
- フルスクリーン構造(画面が大きく見える)
- 拡張ポートはステッカーの下に隠されている
- より薄型化
3. バッテリー容量
M5Paper V1.1: 1150mAh
M5Paper S3: 1800mAh(約1.6倍)
ポイント: S3の方が長時間動作が可能です。
4. センサーと機能
M5Paper V1.1:
- SHT30 温度・湿度センサー
- FM24C02 EEPROM(256バイト)
M5Paper S3:
- BMI270 ジャイロスコープセンサー(動作検知対応)
- オンボードブザー(大音量)
- ステータスLED(書き込みモード確認用)
- 温湿度センサーなし
ポイント: S3は動作検知やブザーなど、インタラクティブな用途に適した機能が追加されています。
5. ディスプレイの見え方
M5Paper V1.1:
- バックライトなし
- 暗い場所での視認性が比較的良好
M5Paper S3:
- 表示エリアがやや暗め
- 明るい場所では見やすいが、暗い場所では見づらい
6. 重量
M5Paper V1.1: 約86g(公称)
M5Paper S3: 約95.5g
どちらを選ぶべき?
M5Paper V1.1が向いている用途
- スマートホーム制御パネル
- 温湿度の監視が必要なプロジェクト
- 暗い場所での使用が多い場合
- 拡張ポートを多用する開発
M5Paper S3が向いている用途
- IoTモニタリング
- 電子書籍リーダー
- 動作検知が必要なインタラクティブな用途
- より高性能な処理が必要なプロジェクト
- 長時間バッテリー駆動が必要な場合
まとめ
M5Paper S3は、M5Paper V1.1の正統進化版として、より高性能なプロセッサ、大容量バッテリー、新しいセンサーを搭載しています。フルスクリーンデザインも採用され、より洗練された外観になっています。
一方で、温湿度センサーが省略され、暗い場所での視認性がやや低下しているため、用途によってはM5Paper V1.1の方が適している場合もあります。
プロジェクトの要件に応じて、どちらのモデルが最適かを検討することをおすすめします。
動作確認
動作確認をしました。
よくよく考えたらこの項はプログラムを書き込まない人には関係ないので、デジタル名刺を作る人は飛ばしてください。
環境設定
まず環境設定をします。
arduinoIDEです。
基本設定を開きます。

追加のボードマネージャのURLに以下のリンクを貼り付けます。

そして、ボードマネージャを追加します。

使用するボード、今回はM5PaperS3を選択します。

テスト書き込み
arduino IDEにあるサンプルプログラムを書き込んで動作確認をします。
サンプルプログラムはファイル→スケッチ例→M5GFXにあります。
今回はBarGraphというものを書き込んでみます。

このプログラムは波を打つようなプログラムでした。

デジタル名刺のつくり方
この製品で一番使われることの多いだろうデジタル名刺の作成に挑戦します。
マイクロSDがある方は以下の公開されているコードでやるのが一番楽かもしれません。
プロジェクトの作成
今回は家にあまりのマイクロSDが一枚もなかったので、以下のUIFlowという公式のソフトを使用しました。
まず、プロジェクトを適当に作成します。

このまま接続しようとしたらエラーが出ました。
公式のファームウェアを焼いていないとエラーが出るようです。


UIFlow2ファームの書き込み
以下のリンクからM5Burnerというソフトをインストールします。
そして、PaperS3ようのものを選択して焼きます。
バージョンは2.3.9-hotfixというものを選択しました。
私の環境の問題か、v2.4.0だとエラーで書き込めなかったです。
オプションは特に変更する必要はないです。

画像の配置
UIFlowに戻ります。
左の方に画像のマークがあるので、ドラッグアンドドロップでアイコンを画面上にもってきます。

画面上に表示されたアイコンをダブルクリックすると編集画面が表示されます。
add imageのボタンを押して表示したい画像を選択します。
大きさをぴったりにしたい人は960×540です。
別に拡大縮小で適当に合わせることもできます。

大きさと位置を決めたらrunで表示を確認します。

問題がなかったらダウンロードでファイルに転送します。

完成
上手くできていたら表示できます。
全てguiで完結ですごい簡単でした。

ここまで作ってみたものの、デジタル名刺が必要な場面は多くないと思います。
そこでおすすめなのが、自分の好きな画像を表示して飾ることです。
質感がちょうどいい感じで映えます。
個人利用の範囲なので大丈夫なはず。

私はミニ6の手帳に挟んでいます。

まとめ
M5Paper S3は、電子ペーパーの「省電力で表示が消えない」という強みを、手軽にプロトタイピングへ持ち込める一台です。旧M5Paper(V1.1)と比べて処理性能とメモリ、バッテリー容量が増え、動作検知系センサーやブザーなど“触って楽しい”要素も追加されました。一方で温湿度センサーが無く、暗所の見え方などは用途次第で好みが分かれます。
実際の導入は、Arduino IDEでサンプルを書き込んで動作確認する王道ルートも、UIFlow 2.0でGUI完結の名刺表示を作るルートもどちらも現実的でした。特にUIFlowは、画像を置いて転送するだけで「飾れる電子ペーパー」が完成する手軽さが魅力です。デジタル名刺の出番が少なくても、好きな画像や固定表示を“紙の質感”で常設できる価値は大きい。M5Paper S3は、低消費電力という制約を武器に変えて、生活の中に小さな表示デバイスを増殖させられる——まさに「無限の可能性」を感じる開発ボードでした。
