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『PLUTO』鉄腕アトム×浦沢直樹、最強のロボットと7体の最高のロボットの闘いが熱い


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手塚治虫の名作『鉄腕アトム』の一編を、『MONSTER』で知られる浦沢直樹が現代に蘇らせた傑作SF漫画『PLUTO』。2023年のNetflixアニメ化で再び注目を集めるこの作品は、単なるロボットアクションを超えた、深いヒューマンドラマとして多くの読者の心を掴んでいます。

人間とロボットが共存する世界で起きる連続殺人事件。次々と破壊されていく世界最高水準のロボットたち。人を殺せないはずのロボットが犯人なのか?そして事件の背景にある戦争の記憶とは――。

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あらすじ

ある夜、スイス林野庁所属のロボット・モンブランが、山火事現場でバラバラの破片となって発見された。
翌朝には、別の場所でロボット法擁護団体の幹部・ランケも遺体で見つかり、双方の現場を検証した捜査官・ゲジヒトは、二つの事件が同一犯のロボットによるものと考え、追及を開始する(第1話)

人間とロボットが共存する世界。かつて中央アジアで大きな戦争が起こり、国連平和維持軍として世界最高水準のロボットたちが派遣された。彼らは任務を果たしたものの、戦争の凄惨な光景に深い「心の傷」を負い、それぞれの日常へと戻っていった。

戦争から4年後、平和維持軍として活躍した優秀なロボットたちが次々と何者かに破壊される事件が発生する。ユーロポールのロボット刑事ゲジヒトは、この不可解な連続殺人事件の捜査を開始する。

ロボットは人工頭脳のシステム上、人間を殺害できないはずなのに、事件現場では人間の犠牲者も発見される。すべての犠牲者の頭部には、角のようなものが刺されていた。

世界観を感じるための用語解説

第39次中央アジア紛争

独裁国家ペルシア王国の軍事拡大を阻止するために起きた戦争。世界最高水準のロボット7体が平和維持軍として派遣され、戦争は終結したものの、彼らの心には深い傷が残されました。この戦争は現実のイラク戦争をモチーフにしています。

ボラー調査団

ペルシア王国に大量破壊ロボットの実態調査のため派遣された国際調査団。お茶の水博士やホフマン博士など、各分野の専門家で構成されていました。彼らが発見したものが、後の悲劇の引き金となります。

国際ロボット法

ロボットが守るべきルールと、保障されるべき権利を定めた法律。アシモフのロボット工学三原則に基づき、「人に危害を加えてはならない」などの規定が設けられています。

装甲車を一撃で破壊する威力を持つ特殊合金。ホフマン博士が開発し、対人使用は禁止されています。この武器を使える存在が限られていることが、事件解決の重要な手がかりとなります。

トラキア合衆国

「世界のリーダー」を自負する大国で、アメリカ合衆国がモデル。エデン国立公園という広大な保護区域を持ち、物語のクライマックスの舞台となります。

作品のおすすめポイント

ブラウ1589の圧倒的な存在感

人を殺したという過去を持つ完全な人工知能搭載ロボット、ブラウ1589。彼は物語全編を通して敵か味方かわからない謎めいた存在として描かれます。

幽閉された独房の中から、様々な事件の真相を見通す圧倒的な知性。ゲジヒトやアトムとの対話シーンでは、その深遠な思考が垣間見えます。完璧な人工知能を持つロボットは本当に人を殺せるのか――この作品最大のテーマを体現する、象徴的なキャラクターです。

物語における彼の役割と最後の選択は、ぜひ本編で確かめてみてください。

個性豊かなロボットたちの魅力

物語の主人公格であるゲジヒト、森を愛する優しきモンブラン、戦闘特化型のノース2号、誇り高き格闘家ブランド、最強の戦士ヘラクレス、平和を愛するエプシロン、そしてアトム。7体の世界最高水準ロボットは、それぞれが異なる個性と背景を持っています。

全8巻(アニメは全8話)の中で、各ロボットの生い立ちや想い、戦争で負った心の傷が丁寧に描かれており、自然と感情移入してしまいます。特にゲジヒトとエプシロンの物語は、読者の心を深く揺さぶる感動的な展開です。

彼らは単なる機械ではなく、悩み、苦しみ、愛する心を持った存在として描かれます。その生き様と選択は、きっとあなたの記憶に深く刻まれるでしょう。

創造者とロボットの絆

この作品では、ロボットに対して人間が抱く複雑な感情が多層的に描かれます。恨み、恐れ、嫉妬、そして深い愛情――。

アトムに対するお茶の水博士と天馬博士の対照的な関係性も見どころの一つです。亡くした息子トビオの身代わりとして作られたアトムを、天馬は愛せなかった。一方、お茶の水はアトムを科学の到達点として、また一人の存在として慈しみます。この対比が、物語に深い陰影を与えています。

特に心を打つのが、ゲジヒトとホフマン博士の絆です。創造者と被造物という関係を超えた、父と子のような信頼関係。ホフマンがゲジヒトを守ろうとする姿、ゲジヒトがホフマンを信頼する姿には、真の家族愛が感じられます。

ロボットの記憶と心の傷

ロボットが見る「夢」の描写も、この作品の重要な要素です。彼らの夢は人間のそれとは異なり、電子頭脳に記録された過去の記憶がリピートされるもの。記憶を削除しない限り、決して忘れることができません。

戦争で体験した凄惨な光景、失った仲間、そして自らが犯した「同胞殺し」の記憶。これらは悪夢として彼らを苦しめ続けます。ゲジヒトが繰り返し見る悪夢、エプシロンが抱える罪悪感――完璧な記憶を持つからこそ、彼らの苦しみは深いのです。

この設定は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のメタファーでもあり、戦争が残す心の傷を鮮烈に描き出しています。

少し気になったポイント 

完全な人工知能は人を殺せるのか?

物語の核心に関わるこのテーマについて、序盤は慎重に、謎めいた形で提示されます。ブラウ1589という前例が存在し、彼の人工頭脳を調べても「正常」だという事実が、読者に不安と疑問を抱かせます。

しかし物語が進むにつれ、この問いに対する答えがより明確な形で示されていきます。個人的には、この問いを最後まで曖昧に保つ演出も魅力的だったかもしれません。ただ、アトムの重要な転換点を考えると、作品として必要な選択だったのでしょう。

天馬博士が語る「完璧な人工頭脳は悩み、苦しみ、間違いを犯す」という言葉が、この問いへの一つの回答となっています。

戦闘シーンの描写について

敵である「プルートゥ」との戦闘シーンが、意図的に省略されている印象を受けました。モンブラン、ノース2号、ブランド、ヘラクレスといった世界最高水準のロボットたちの戦いは、その多くが結果のみが描かれます。

一方で、アトムとエプシロンの戦いは比較的詳細に描写されており、この対比は明らかに意図的なものでしょう。「見えない恐怖」「圧倒的な力の差」を演出する効果的な手法ではありますが、7体それぞれの戦闘スタイルや能力をもっと見たかった、というのが正直な感想です。

ただし、『PLUTO』はバトル漫画ではなく、ヒューマンドラマとミステリーに重きを置いた作品です。戦闘の過程よりも、その結果がもたらす感情の動き、残された者たちの悲しみや怒りに焦点を当てる演出の選択と言えるでしょう。

戦闘シーンを期待する読者には物足りなさを感じるかもしれませんが、キャラクターの内面描写を重視する読者にとっては、この演出は作品の完成度を高める要素となっています。

plutoの作品情報

基本情報

原作: 手塚治虫『鉄腕アトム』「地上最大のロボット」の巻

手塚治虫の名作『鉄腕アトム』の一エピソード「地上最大のロボット」を、現代的な視点で再構築したSFミステリー作品です。

原作の骨格を残しながら、戦争の傷跡、憎悪の連鎖、ロボットの人権といった現代的なテーマを深く掘り下げています。

漫画: 浦沢直樹

監修: 手塚眞

連載: 「ビッグコミックオリジナル」(小学館)2003年~2009年

単行本: 全8巻

受賞歴

  • 第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞(2005年)
  • 第52回小学館漫画賞青年一般部門(2007年)
  • 第39回日本漫画家協会賞大賞(2010年)
  • アイズナー賞最優秀アジア作品賞(2011年)

まとめ

『PLUTO』は、手塚治虫の原作を浦沢直樹が再構築した、現代を代表するSF漫画の傑作です。

ロボットと人間の共存、戦争がもたらす心の傷、消えない憎悪と赦しというテーマを、緻密なミステリー展開の中で描き出しています。ゲジヒト、アトム、エプシロンをはじめとする個性豊かなロボットたちの物語は、読者に深い感動を与えてくれます。

特に注目したいのは、ロボットたちが「心の傷」を抱えるという設定。彼らもまた人間と同じように苦しみ、悩み、時には間違いを犯します。完璧な人工知能とは何か、ロボットは人を殺せるのかという根源的な問いかけは、AI技術が発展する現代においてより重要な意味を持っています。

全8巻という長さながら、各キャラクターの掘り下げが丁寧になされており、一気読み必至の展開です。漫画はもちろん、2023年のNetflixアニメ版も高い完成度を誇っています。

手塚治虫へのリスペクトと浦沢直樹の卓越したストーリーテリングが融合した『PLUTO』。まだ読んでいない方は、ぜひこの機会に手に取ってみてください。きっと、ロボットたちの魂の叫びに心を揺さぶられるはずです。

ネットの評価

一つ一つが、実に奥深いといいますか、凝ったストーリーです。
アトムは愛すべきロボットだ。 完璧じゃないロボットアトムは、いつだって完璧じゃない人間の味方なんだ。
面白い、何回見ても名作

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