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『天使のたまご』押井監督の幻の名作が高画質になって40年ぶりに再上映


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押井守監督の“幻の名作”『天使のたまご』が、4Kリマスターで40年ぶりにスクリーンへ帰ってきました
長らく配信もなく、レンタルでも見当たらず、入手しようとすると高額——そんな「存在は知っているのに辿り着けない作品」だったからこそ、今回の再上映は事件です。

物語を説明してくれるタイプの映画ではありません。
沈黙、雨、水没した都市、奇妙な機械、祈りのような反復。そこに天野喜孝の線が重なり、画面そのものが寓話になります。理解するというより、雰囲気に呑まれ、あとから意味が追いかけてくる
この記事では、ネタバレなしのあらすじと見どころ、そして鑑賞後に楽しめる関連書籍・音楽までまとめます。

My Score

知名度

分かりやすさ

面白さ

あらすじ

たまごを守る少女と、鳥を探す少年。

忘れ去られた街で、ふたりは出会った。

水に沈んだ都市。
たまごを抱えて、ひとり徘徊する少女。

ある日、奇怪な戦車から少年が降り立つ。
彼は、夢で見た“鳥”を探していた。

廃墟のような街を巡りながら、
言葉を交わす少女と少年。

ふたりの間には
ほのかな共感が
芽生えたかに見えたが—。

ノアの方舟が“陸地を見つけられなかった”もうひとつの世界。
海の上には、巨大な眼球を思わせる不気味な天体(太陽のような機械仕掛けの宗教的シンボル)が沈み、世界は永い夜に包まれていきます。

舞台は、忘れ去られた街。そこでひとりの少年と、卵を抱く少女が出会います。
少女は、どれほど昔からここにいるのか自分でも思い出せないまま、「これは天使のたまごなんだ」と信じて、大切に抱え続けています。対する少年は、その信仰めいた確信に静かに疑問を投げかけます。——「卵は割ってみなければ、中に何が入っているのかわからない」。

夜ごと街には、魚の影が現れます。影を狩るために銛を打ち続ける人々。容赦なく降り続く雨。水に浸食され、沈んでいく廃墟。
少年と少女は、崩れた建物や沈黙する機械の残骸を抜けながら、互いに“信じているもの”を少しずつ露わにしていきます。

やがて、少女が語る「鳥」や「天使」にまつわる手がかりが、街の深部で姿を現します。
この世界で、卵は本当に何を宿しているのか。少年の確信と少女の祈りは、交わるのか、すれ違うのか——。
『天使のたまご』は、物語というよりも寓話のように、静かな映像と象徴で観る者の解釈を試す作品です。

アニメ『天使のたまご』オフィシャルサイト

作品のおすすめポイント

40年ぶりの公開──『天使のたまご』が“観られる”時代に

『天使のたまご』は、これまで「観たくても観られない」作品の代表格でした。
配信はほぼ見当たらず、レンタルビデオ店にも置いていない。Amazonやメルカリを探しても、出てくるのは高額出品ばかり……そんな距離感のある作品だった印象です。

それが今回、4Kリマスターという形でスクリーンに帰ってきました。
この作品を、きちんとした画質と音で体験できる機会が来たことが、素直にうれしいです。

ファイナルファンタジーでおなじみ、天野喜孝の世界観

本作のデザインを語るうえで欠かせないのが、天野喜孝さんの存在。
「絵が上手い」という言葉では足りない、線そのものが芸術になっているようなデザインが、とにかく刺さります。

ファンタジーの世界観を“描く”というより、“召喚する”タイプの表現。
天野喜孝さんの美意識が、この作品の空気の濃度を一段上げています。

難解で、だからこそ芸術的な作品

『天使のたまご』は、押井守監督作品の中でも特に難解で、よくわからない作品として知られています。
物語を追いかけるというより、映像や象徴の連なりを“浴びる”感覚に近いかもしれません。

でも、そこがこの作品の魅力でもあります。
商業的な成功を狙った作りではないからこそ、最近の映画ではなかなか出会えない、独特の静けさと異物感がある。
理解できるかどうかよりも先に、忘れられない雰囲気が残る──そんなタイプの作品です。

関連商品も続々再販

関連商品も続々再販されています。

特に書籍に関しては、本当に絶版で2万円くらいの値段がつけられてメルカリで取引されていたものが多いので、入手ができるようになってとてもうれしいです。

映画を見てからも世界観を楽しめます。

劇場パンフレット

劇場パンフレットは押井監督や天野先生のインタビューが載っているそうです。

私が行った時には売り切れだったので、再販されたタイミングで購入できた方はうらやましいです。

『天使のたまご』アニメージュ特集記事完全復刻ブックレット

1985年発行の『アニメージュ』に掲載された『天使のたまご』の特集記事を、当時の誌面そのままに8号分完全復刻したもののようです。

これは劇場や徳間書店のサイトで販売されています。

これはなんとか買うことができました。

その当時の解説など届いたらぜひ読みたいです。

『天使のたまご』アニメージュ特集記事完全復刻ブックレット トクマショップ

少女季 新装版 天使のたまご

これは天野喜孝先生が書いた天使のたまごの絵本です。

新装版が発売されるまでは2万円くらいのプレミアがついていました。

天使のたまご (アニメージュ文庫) 

これは押井監督と天野先生が共同で映画の原案として書かれたものを文庫化したものだと思います。

THE ART OF 天使のたまご 増補改訂復刻版

これは映画のイラストやフィルムメイキングを収録したものです。

天使のたまご イメージボード集

これは天野先生が描いたイメージボード集です。

これを見て押井監督が話を決めていったのだと思います。

天使のたまご イメージボード集:天野喜孝の販売・通販 | OIL

天使のたまご 音楽編 「水に棲む」

こちらは映画のサウンドトラックとなっています。

菅野由弘さんが手がけたものをリマスタリングして、新たに発売されました。

天使のたまごの作品情報

  • 原案・脚本・監督:押井守
  • キャラクターデザイン:天野喜孝
  • 音楽:菅野由弘
  • アニメーション制作:スタジオディーン
  • 発売日:1985年
  • 時間:71分

権利が⁠転売を繰り返された結果、長らく日の目を浴びなかった作品です。

[ネタバレ含む]自分なりの考察

考察というほどでもないですが、自分の感想をまとめておきます。

魚と兵隊

劇中では水に関するモチーフが多く登場します。

その中に影の魚を捕まえようとする兵士のような人達が出てきます。

これは少女のセリフからも想像できるように、捕まえられないものを捕まえようとする大人たち、意味のないものを追い続ける大人たちを表現しているのではないかと考えました。

また、魚は鳥(天使)との対比となっていて、

鳥と天使

鳥は神話の中でいつか戻ってくる象徴のようなことを言っていたので、箱舟における希望の象徴ではないのかなと思いました。

青年はたまごは割らないと中に何が入っているかわからないと言っているシーンがあります。

たまごが割られたシーンでは、その中に何が入っていたかの描写はありません。

少女はたまごが割られたことに号泣したように見えますが、実は何も入っていなかった、たまごから孵化するという少女の希望が打ち砕かれたことで泣いていたのではないかと思いました。

でかい目みたいなものと石像たち

序盤の石像のシーンを見たときに思ったのが、中国の兵馬俑みたいだなと思いました。

そして、最後に少女がその石像になっています。

兵馬俑は死後の世界で始皇帝を守るために作られたと言われています。

でかい目みたいなのは鬼太郎のバックベアードっぽいですよね。

最後までこいつの説明はありませんでしたが、沈む姿と浮かび上がる姿から太陽のようにも見えました。

たぶん、クトゥルフ神のようによくわからない強大なものという感じなのだと思います。

その強大なものを守護する?支配されている人間という感じでしょうか。

青年

青年は何かを知っていそうですが、「どこから来たかも、どこへ行くかもわからない」と発言しています。

大人たちが影の魚を追っているように、少女が孵化することのないたまごを抱えていることから解放するためにたまごを破壊したように思えました。

しかし、それによって少女は死んでしまい、箱舟に一人取り残される形になります。

大きな目のような構造物には戦士のような像がたくさんあるように見えました。

青年は魚を追うこともないし、少女のように鳥が戻ってくると考えることもできません。

だから、どこから来たのかどこへ行くのかもわからないのでしょう。

少女を含めて、何かを信じることができる人間と何も信じることができずに取り残されてしまった青年の対比でもありそうです。

監督の説明

監督の解説はネットのインタビューや特にwikipediaにまとめられています。

天使のたまご - Wikipedia

・ノアの箱舟の世界観

・宗教的モチーフ

・生命のイメージ

が濃密に絡み合った作品であるということが述べられています。

水のイメージはアンドレイ・タルコフスキーのソラリスのイメージから来ているらしいです。

また、後年の作品にセラフィムという天使の漫画があり、そこにも天使の化石が登場します。

攻殻機動隊の最後にも石板にかかれた生命の樹が出てきますね。

鳥についてはパトレイバー2に象徴的に出てきますね。

このように後の作品にも通ずるような押井監督の思想が現れている作品だと思います。

ネットの評価

見た後に考察などいくらか読んだりもしたが、それにしたって確かな事はよく分からん。
自分なりに考えて楽しめる
いろんな観方、感じ方があると思います。

まとめ

『天使のたまご』は、いわゆる「分かりやすい名作」ではありません。けれど、分かりやすさの代わりに、忘れられない感触を残していく作品です。
水に沈む街、夜の気配、影を追う人々、そして“たまご”を抱く少女と“鳥”を探す少年。言葉は少ないのに、画面の密度だけで世界の重さを伝えてきます。

今回の4Kリマスター再上映の価値は、単なる高画質化にとどまりません。
細部の線や質感、暗部の階調、雨や水面の表情——この作品の核である「空気」を、ようやく正面から受け取れる状態になったからです。天野喜孝のデザインが好きな人はもちろん、映像美や象徴表現が好きな人にとっては、まさに“今こそ観る理由がある”一本だと思います。

そして嬉しいのが、関連書籍や音楽が再び手に入りやすくなっていること。映画を観て終わりではなく、パンフレット・復刻ブックレット・絵本・アートブック・サントラまで含めて、世界観を長く味わえる土壌が整ってきました。

まずは何も知らないままでもいい。雨の音と沈黙の中に身を置いて、「自分の解釈が立ち上がる瞬間」を待つ——『天使のたまご』は、そういう鑑賞体験そのものがご褒美になる映画です。

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